第2ボタン

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教室に小林だけを残して、俺と咲は廊下を歩いた。 少し廊下を歩いたところで立ち止まって振り返る。 俺の少し後ろを歩いていた咲も、立ち止まって辺りを見渡した。 生徒は皆、卒業生を見送るために出払っていて、此処には正真正銘俺と咲、ただ二人しかいない。 咲は、一度だけ俯いて、何かを決心したように、もう一度俺の方を見た。 「圭の第2ボタン、下さいっ。」 前にも聞いたことのあるその台詞。 俺は4月になれば3年になるし、別に卒業するわけじゃないから今まで通りこの学ランに世話になる。 それに、相手が違うだろ? 前に言われたときは、俺はそんなことを理由に断った。 「なんで?」 「……前に、話したじゃん?二番目に好きな人の第2ボタンを持ってると、恋が上手くいくんだって。」 咲が俺の第2ボタンを欲しがっていた理由を聞けば、前と同じ理由が返ってくる。 「……ふぅん。」 二番目。 前に言われたときは、その言葉にムカついて、俺は咲に無神経だと言って第2ボタンを渡さなかった。 わざと素っ気なく返事を返したあと、胸元に手を添えた。 咲が望む第2ボタンを外して、咲に渡せば、咲は意外という感じで俺を見返してくる。 きっと、俺の第2ボタンを貰うのに、もっと手こずるとでも思っていたんだろう。  
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