2825人が本棚に入れています
本棚に追加
もう、バレてしまったものは仕方ない。
そう考えたあたしは、腹を決めてソファーに腰掛けた。
圭は、昔から、あたしをからかう事に生き甲斐を感じているような男。
こんなふうに恋愛相談なんてしたら、またからかわれるもんだと思って今まで黙っていた。
「……不安なんだもん。だから、第2ボタン持ってれば、少しは自信つくかと思ったんだもん。」
春になれば、島谷先輩は上京して大学生。
そしたらあたしたちは、遠距離恋愛になるんだろう。
付き合っていても、不安なものは不安。
涙が溢れそうになるのを堪えて、横目で圭を見つめた。
圭はからかうわけでもなく、励ますわけでもなく。
ただ黙ったままあたしを見つめ返してくるだけ。
何も言わない圭に、痺れを切らしたあたしは、言葉を繋げた。
「……やっぱりあたし、圭のことは島谷先輩の次に好きだし、第2ボタンください。」
軽く頭を下げながら、いつもより丁寧な口調で。
圭は、いつもあたしを茶化したり馬鹿にしたりとか、そんなことばかりする男。
でも、あたしが圭を頼って真剣にお願いをしたときは、なんだかんだ言って必ず力を貸してくれる。
だから今回も、きっと。
あたしはそう思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!