第9ボタン

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もう、バレてしまったものは仕方ない。 そう考えたあたしは、腹を決めてソファーに腰掛けた。 圭は、昔から、あたしをからかう事に生き甲斐を感じているような男。 こんなふうに恋愛相談なんてしたら、またからかわれるもんだと思って今まで黙っていた。 「……不安なんだもん。だから、第2ボタン持ってれば、少しは自信つくかと思ったんだもん。」 春になれば、島谷先輩は上京して大学生。 そしたらあたしたちは、遠距離恋愛になるんだろう。 付き合っていても、不安なものは不安。 涙が溢れそうになるのを堪えて、横目で圭を見つめた。 圭はからかうわけでもなく、励ますわけでもなく。 ただ黙ったままあたしを見つめ返してくるだけ。 何も言わない圭に、痺れを切らしたあたしは、言葉を繋げた。 「……やっぱりあたし、圭のことは島谷先輩の次に好きだし、第2ボタンください。」 軽く頭を下げながら、いつもより丁寧な口調で。 圭は、いつもあたしを茶化したり馬鹿にしたりとか、そんなことばかりする男。 でも、あたしが圭を頼って真剣にお願いをしたときは、なんだかんだ言って必ず力を貸してくれる。 だから今回も、きっと。 あたしはそう思っていた。 
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