師走

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12月 30日 雪 ようやく会社が無理矢理 「仕事納め」に区切った作業を終え 今日はとっとと 一っ風呂浴びて寝ちまおう などと考えながら 正月休みの予定やら来年の事について談笑する仲間に  よい年を と軽く挨拶しコートを取ると 事務のおばさんが  今から皆で飲みに行くんだけど 来る? なんて 聞いてきた ああ 予想はしてたよ  毎年の事だもんな で やっぱり去年と同じように答える ゴメンネ 今から里帰りなんだ 僕 もちろん実家は地元も地元で 会社からだってたいした距離も無く 里帰り なんて大嘘なんだが 仕事終わってまでなんで何時ものメンバーの顔みなきゃなんねぇんだ って理由から  毎年忘年会は辞退させてもらっている ちなみに社員名簿にのっとる出身地は嘘八百だ それにしたっていい加減おぼえろよ  このパターン てか 気づいてるだろ 本当の理由ってやつには ともかく つかまっては大変だと家路を急ぐが 会社の玄関先で 凍てつく空気に一瞬にして心臓をつかまれた やれやれ と 肺に力をいれて狂った鼓動をどうにか諌める 昼から降ったりやんだりの雪は 黒く濁りながら いつの間にか踝ほどまでつもっていた 傘はコンビニで買えるとして 長靴はどうしよう なんて考えながらも 靴下にしみこむ水の事は半ばあきらめて歩き出す いつも こんな感じだ
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