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ある男が野良猫に名前をつけて可愛がっていたそうだ
名前を仮に てとら としよう
長い間 その猫のいる場所に通う内
自分の他にも餌付けしている人間がいる事に気づく
かといって別段なんとも思う事も無く
いや むしろ こいつを可愛がってくれてありがとうという
感謝の念さえ浮かんだそうだ
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ある時 男は その猫が違う名前で呼ばれている場面に出くわす事となる
猫は食後らしく 機嫌よさげに
食事を与えた相手に対しにぃにぃと応えていた
さすがにその時は少し寂しかったらしく
軽く唇をまげて笑い
持ってきた餌を他人の目に触れぬよう隠してそそくさと
その場をあとにした
次の日
男が昨日呼ばれていた名で猫に声をかけると
猫は応えず
てとら と呼ぶときちんと反応したようだ
名前に託された呪というものはくくられるものにとって
一定のものではない理由がここにある
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