六月の手紙

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拝啓、貴方へ。 しとしとと降る雨が紫陽花の花を濡らす季節となりました。 窓から見えるその景色は、私の寂しさをより深めます。 そちらでも梅雨はあるのでしょうか? 無知な私にはわかりません。 こんな季節には、一本の傘を二人で差して買い物に出掛けた日の事を思い出します。 貴方はいつも、『何も雨の日に買い物に行かなくても』とか、『傘は一本ずつ差そうよ』とか照れながらブツブツ言っていましたね。 全く、わかっていませんね。 私は貴方と一本の傘に入って出掛けるのが、とても嬉しかったのです。 買い物など、その理由付けに過ぎません。 貴方は本当に鈍感です。 .
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