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よく見てみれば人だった。
周りを見渡せば人なんていない。
当たり前だ、時間といい、場所といい、人はいない。
救急車か、いや、それより介抱せねば。
傘を投げ出したいほど僕は焦ってはいるものの、冷静を装いその黒い人に近付いて
「大丈夫ですか!!聞こえますか!!」
大声で呼び掛けたが
意識がないようだ。
僕はその人のとても細い腕に手をあてたりと、色々確認する。
脈はある。
息もある。
よかった生きてる。
けど体は冷えきっている。
介抱してわかったけど女の人だ。
意識不明の彼女の顔を見た時、
こんな時なのにこの人を綺麗だと思ってしまった。
僕は情けなさからか、自己嫌悪に苛まれた。
そんなことよりも!!
救急車を呼ぼう。
電話を探す…あ。携帯ないや…。
貧乏だったんだ!!!
そう思った矢先だった。
どうやら彼女に意識がよみがえったようだ。
彼女は
「……匿って…。」
眼を閉じながらもそう囁くように言った。とてもか細い声で。
僕はこの子がワケありなんだと悟った。
だからその時の僕は、同情していたのかも知れない。自分と重ねていたかもしれない。
僕は近くに住むアパートへ、彼女を運んだのだった。
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