第一話・―暗躍者―

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 少年の名前は、神藤隆之(しんどうたかゆき)。彼は長いあくびと共に伸びをしながら、人気が無くなった校舎で呑気に呟いた。 「よく寝た」  立ち上がり学校を出る隆之の日課は、いつもの寄り道。  別段寄りたいところがあるとか、行かなければいけない訳でなく、単に彼が夜の“バイト”をするのに相応しい場所に向かっているのだ。  そこは歓楽街の落とし穴。忘れられた、落ちぶれた歪み。誰も近寄らない、近寄らせないアンダーグラウンドな世界。  隆之はつい先日、高校に入ってからこの“仕事”を始め、踏み入れてはいけない世界に足を踏み入れた。  とある人物の助けを借りて――。
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