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ノックを二回すると、すぐに中から「どうぞ」の一言が返って来たので、俺は「失礼します」と一言だけ言って扉を開いた。
中に入ると、本棚に囲まれた部屋の中央にある、なんとも偉い人が座りそうな机の椅子にその人は腰かけていた。
肩まで伸びた真っ黒な髪は、歳を感じさせず、何より黒を強調させる雪のように白い肌。和服さえ着れば、見事なやまとなでしこと言えるだろう。
この人が、この学園の学園長だ。聞いた話だと、かなり頭が良く、高校卒業ですぐに教師になった、特例中の特例らしい。
「あら、アゲハくん。どうしたの?」
ようやく落としていた目を上げて、こちらに笑いかけてくれた。
「いや、あのー。お願いがあるんですが、いいですか?」
「何かしら?」
少し首を傾げたその人は、一ミリも驚いていないようだった。そのそぶりに安心できた俺は、思い切って言ってみた。
「こいつ。風祭由衣って言うんですが、事情がありまして、素性は明かせないんですが、この学園に通わせてもらえないでしょうか?」
「了承」
「えっ!?」
珍しく敬語を使い、頭も深く下げた俺は、何を言われるかをビビったが、案外すぐに返事が返ってきた。それも、一秒で……。
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