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「どうしたのだ、アゲハ?」
「んにゃ、気にしないでくれ」
とりあえず、朝の不幸な気持ちを引きづりつつ、由衣に学校を案内していた。
尚且つ、授業もサボる予定だ。
「それにしても、学校って楽しいな」
隣を歩く由衣。朝からずっとご機嫌。ニコニコと漂う和やかな感じが何とも言えない。
だが、俺は強く否定する。学校は楽しくないし、むしろつまらん所だ。
「つか、まだ来たばっかで楽しいのか?」
「うん!」
即答。聞いた俺が馬鹿だったと思うことにしようとしたが、由衣は先にこう言った。
「アゲハと一緒にいられるから楽しいぞ」
俺は歩みを止めた。
今の今まで、そんなことを言われたのは、始めてかも知れない。
何気ないことだから、夏樹や梨香は、言わないだけかも知れないが、その何気ないことを軽々言う由衣を俺は凄いと思う。更に憧れもした。その真っ直ぐな感性に――――
「アゲハ?」
歩を止めた俺に、振り返るように彼女は顔を向ける。整った顔立ちに、大きな瞳が俺を映す。
「なんでもない」
俺は再び歩を進めた。
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