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言った。
言ってしまった。
計画ではもっとお洒落な言い回しを駆使した告白であったのだが、そんなことは頭の中から消えてしまっている。
何はともあれ、俺は目の前の夏木さんに自分の気持ちを包み隠さず告白したのだ。
後は結果を待つのみ。
「あの…」
夏木さんが口を開けた。
俺にはこの間がまるで永遠であるかのようにも感じられた。
夏木さんの艶のある口元から紡ぎ出される言葉が俺の願う内容であることを心の中で祈った。
「ごめんなさい。柳田くんの気持ちには答えらんないよ。気持ちは凄く嬉しいんだけど…。
やっぱりごめんなさい」
そう言って夏木さんは申し訳なさそうに頭を下げた。
終わった。
全身の血液が物凄いスピードで引いていくのを感じる。
このときだ。この時に俺はようやく今回の告白が時期尚早であったことを悟った。
あぁ、もっと普段の会話から距離を縮めて行くべきであった。あまりにも駆け足であった。
例えるならカップ麺をお湯を入れる前に食べる。そんな感じだ。
しかしこんなことがあってはこれから学校ではまともに話して貰えないだろうし、下手したら嫌われただろう。
阿呆か。俺はどこまで阿呆なんだ。自分自身が惨めで仕方がない。
俺の恋は終わったのか。
悲しみに沈んだ俺はうなだれ顔を下に向ける。
「は?」
俺の下に広がっていた有り得ない光景に俺は、思わず素っ頓狂な声を上げた。
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