プロローグ

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 桜花は、まだ地図を頭の中で思い浮かべながら、不慣れな街を疾走する。 コンビニには直ぐに見えてきた。 すると、コンビニの前に妙に露出度の激しい女性が。女子高生の短い制服を更に短くした超絶ミニスカートに、ピッチリと肌に張り付いたシャツ。残念なのは、髪が傷んでいるくらいか。 「東京すげー! スカート短!?」 と、思わず見とれて顔を赤らめる桜花。 「あの……お兄さん。桜木コーポって分かります?」 と聞かれた桜花は、咄嗟に後ろを振り向いた。誰もいない事を確認した後で、さらに自分を指さした。 どこまでも疑り深い男だ。慎重すぎて石橋を叩き壊して橋を渡れなくなるタイプ。 「そう貴方。桜木コーポ知ってる?」 桜花は、初めて話した東京人に感動した反面萎縮した。 「信号を右に曲がって真っ直ぐ行くと左手に見える」 と無愛想に答えた。(俺のバカ! 緊張して言葉が出なかった)と悔やんでみせたが、もう遅い。 「あっそ。ありがと。忙しいのにわざわざ。他の奴に聞けばよかった」 とスカートが短い美しく真っ白い足を持った女性は怒ったような口調で吐き捨てるように言った。眉間にしわを寄せ、ゴミを見るように桜花を見て呟いた。「東京は噂どおり冷たいよ。父さん」と。泣きそうな声で。消え入りそうな声で不安そうに呟いた。 彼女の後ろ姿はとても寂しそうに見えた。
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