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プロローグ
暗い瞳をした少年が、引っ越したばかりの古いアパートに、大量に置かれた段ボールの上に腰かけている。
「中々広いな。コンビニは歩いて5分。銭湯は歩いて10分。漫喫は歩いて15分。駅は走って20分」
等と独り言を呟く怪しい雰囲気の少年がいた。
名前は桜花。
明らかに名前負けしている暗い影のある表情。
桜の花ではなく、これならば、月見草的な地味さがある。
「仕送りは10万と……アパートを買ったのに、俺に月10万も相変わらず、金銭感覚が狂ってやがる。家賃の分はいらないって」
過保護な両親に育てられた桜花は、あり余るくらいの物を書い与えられた。
ほとんどは、母親の手によるところが多かったが。
「ここが母さんが暮らしていたアパートに、東京か。楽しみだ。が、恐いよな。先ずは、不良にかつあげされた時に備えて筋肉トレーニングだ」
桜花は、筋トレと書かれた段ボールから、愛用の筋トレグッツを取り出し、黙々と体を鍛え始めた。すると、夕方になってしまった。
「しまった! 夜だ。夜が来る! 東京の夜は危険だ」
慌てて、仕送りから1万を抜き、コンビニに向かった。
しっかりと戸締まりを確認してから。しっかりと。
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