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その頃邸の中。
「じい様!」
「おや、どうした昌浩や」
先程の男の子・昌浩がこの邸の家主・晴明を呼んだ。
昌浩は晴明の前に立つと口を開こうとする。
…が、晴明が発した言葉の方が早かった。
「昌浩…昔は如何なる用件でもきちんと座って話をしてくれたのにのぅ……いつからそんな面倒くさがりになったのか……じい様は悲しいぞ…ほろほろ…」
「………ッ!」
昌浩の体が少し震えている。
怒りによって。
そこに高めの声を発する白い物の怪が畳み掛ける。
「まぁ頑張れや晴明の孫!」
「…もっくん……後で覚えとけよ……」
本当なら直ぐ様「孫言うな!!」と叫ぶのだが、今は祖父である晴明の目の前だ。
叫んだらどうなる事か…。
「じい様、本題に戻りますよ!」
「おぉ! そうじゃった」
昌浩はきちんと座って、用件を話した。
「ふむ、狩衣を着た女子か…」
「この邸の家主と話がしたいそうです」
「晴明…行くのか?」
先程の白い物の怪・もっくんが真剣な面持ちで晴明に問う。
「そうじゃな……行こうか」
「じい様。 俺も一緒に行って良いですか?」
「わしは構わんが相手によるのぅ」
そう言うと晴明と昌浩は廊下を歩いて玄関に向かって行った。
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