始まる時

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現在、晴明の部屋。 「えっと…桜葉姫耀どの…ですよね。 何処から来たのですか?」 「慣れて無いなら敬語じゃなくて良いわ。 名前も呼び捨てで良いし」 「おぉ昌浩や! 見抜かれてるじゃねぇか!」 「もっくん……!」 昌浩はしまったと小さく呟く。 物の怪の姿は普通の人間には見えない。 見鬼の才を持っている者にしか見えないのだ。 だけどあたしは……。 「見えてるから安心して怒鳴って。 昌浩」 「……見えてるの?」 「白い物の怪でしょ?」 昌浩と晴明と物の怪は驚きの余り口が開いている。 「……埃入りますよ?」 あたしが声を掛けると三人(二人と一匹かな?)は我に返る。 「…姫耀殿」 「なんでしょうか晴明殿」 真剣な顔をしながらあたしを見る晴明殿。 「姫耀殿は先程山奥育ちと言いましたね?」 「はい。 確かに言いました」 晴明の声が妙に硬い。 「もしかして……貴女は……帝の」 「……よく解りましたね…あたしが帝の妹という事に」 「「帝の妹!!?」」 姫耀の発言を聞いてしまった昌浩ともっくんが叫ぶ。 「あまり大きな声で言わないで! ばれるから」 「けど…何故帝の妹が安倍の邸に…?」 昌浩は疑問に思ったのだろう。 無理も無い。 本来なら帝の邸に住んで、誰にも姿を見られずに行動する筈だ。 「……知りたい?」 晴明殿と昌浩は顔を合わせてからあたしの方を向く。 「…話していただいても宜しいか?」 あたしは晴明殿の問いに首を縦に振った。 「…少々長くなりますよ……」
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