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「俺がジュリエットだって、ばれるかもしれないし。」
「ばれるわけないだろ?もしかして、さっきの話を気にしているのか?」
気にしているわけではない。
ただ、律が女子に人気があることを改めて実感させられただけだ。
さっきのカフェにいた女子生徒たちは律を『律様』とか『プリンス』と口にしているのを聞いて、複雑な心境だった。
不安、というよりは未だに抵抗している自分が腹が立つ。
別に世間面を気にしているのではない。
猫をたくさん被っていても、いつかは素が出てくるだろう。
違うのだ。
自分と律が付き合っていることを公表した時、どんなことが起きるのかが怖いのだ。
(俺って、何気に小心者なんだな。)
本当に律と付き合ってから、色々と気付かされる。
嫉妬深くて、小心者で、天邪鬼で、そして律にぞっこんであること。
推薦枠で合格しているからいいものの、普通の受験生になった時に、まともに受験に集中できるのだろうか?
思わず不安になってしまう。
顔を俯かせている和臣を見て、律はふっと笑みを浮かべる。
そして和臣に告げた。
「気にするな。何かあった時は俺がカズを守るから。」
「守るって・・・。俺は男だ!」
「俺は、カズだけ側にいてくれるだけでいいから。」
(・・・・・・・。)
反論する言葉も出ない。
和臣は動揺しながらも、頬を赤く染めて顔を俯かせる。
そんな恋人を見て、律はまた笑った。
「俺の部屋に、行こう?」
「ああ。判った。」
(やっぱり、俺は律が好きなんだ。)
改めて自分の気持ちを思い知らされる。
コクンッと頷き、和臣は律と一緒に彼の部屋へと向かった。
もちろん、怪我が完治していないのに律がいたずらをしたことで、和臣は激怒。
鉄拳をお見舞いしたのは、言うまでもなかった。
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