ジュリエットは誰だ!

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「菅生ってもてるんだな。」 「当然だろ?ルックスも良くて、成績優秀、スポーツ万能のイケメンだからな。」 「それなら、春日だってそうじゃねえ?」  透と理人が律から和臣に話題へ転換したが、後ろで麻衣がバッサリと切る。 「春日が菅生みたいにもてるわけないじゃない。猫被っている極悪人が!」 (甘粕、お前だけには言われたくなかった・・・。)  心の中で、麻衣に文句を呟く。  彼女に口では勝てないことを、和臣自身が痛いほど分かっているからだ。  麻衣の毒舌に透も理人も絶句している。 (あの中を普通に通って帰れるだろうか?)  そう思っていた時だった。  正門の辺りで、松蔭の女子二名が通り掛った時、待ち伏せをしていた近隣校の女子生徒たちに囲まれたのである。 「まずい!俺、行ってくるわ!」 「春日!お前、足を怪我しているんだろ!」 「放っておけるか!和田町、新庄先生と体育教官を呼んできてくれ!」 「OK!」 「理人は俺と一緒に来い!」 「判った!」 「あたしも行くわ。」  和臣が透と理人に指示を出し、教室から出ようとしたところで麻衣が同行することになった。  使いにくい松葉杖を使いながら、早足で階段を下りていく。  麻衣は普通に、理人はハラハラしながらも和臣のサポートに入る。  教室から出て二十分。  ようやく正門に着いた三人の前で、松蔭の女子生徒は涙目になりながら彼らの背後に回った。  待ち伏せをしていた女子生徒のうちの一人が、代表として前に立ち、和臣にガンを飛ばす。 「ちょっと!あんた達は何?」 「君達こそなんだ?うちの生徒に何の用だ?」 「ただ、聞いただけよ。そこの二人に『ジュリエットを演じたのはあなた?』ってね。」  予餞会絡みのことだった。  内心『まずいな。』と思いながらも、和臣は毅然とした態度で彼女に対応する。 「根拠は何ですか?仮にそうだとしても、何故彼女たちに確認する必要があるのですか?」 「決まっているじゃない!律様に相応しいか否かを親衛隊である私達が見極めるのよ!」 「親衛隊?」  どうやら、正門で待ち伏せていた近隣校の女子生徒たちは律本人には非公認の親衛隊を結成しているようだ。  そして今、和臣と話している女子生徒が親衛隊の隊長である。 「私、県立物部高等学校二年の岩国早百合【イワクニサユリ】です。菅生律親衛隊隊長ですの。」
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