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(親衛隊って・・・。女の考えていることが全く判らねえ!)
和臣が呆れていると、隣りに立って黙って聞いていた麻衣が口を開いたのである。
「だからって、何で親衛隊に見極められなきゃいけないの?おかしくない?」
「甘粕!」
和臣が制止しようとしたが、無駄に終わった。
麻衣は更に質問を続けた。
「大体、菅生のどこがいいの?ただの男じゃない。親衛隊かなんだか知らないけど、そんなものがあったって大迷惑。こんなことをして、学校間の揉め事を起こして楽しい?」
(誰か!こいつを止めてくれ!)
麻衣の言い分は正しい。
しかし、正しいことを言って人間がそれに素直に従うことはほぼない。
ムカッとしたのか、早百合が言い返そうとしたところで、透が新庄と体育教官を伴って到着した。
「春日!」
「先生!」
教員が来たことにまずいと思ったのか、早百合の後ろにいた親衛隊のメンバーらしき女子生徒たちが表情を曇らせていく。
そして彼女達を見て、体育教官が一喝した。
「他校の生徒が何でここにいる!制服でどこの学校だかわかるんだぞ!」
その一喝が答えたのか、親衛隊たちがぞろぞろと逃げ出していく。
そして早百合もお決まりのパターンで『覚えていなさい!』と和臣に言葉をぶつけると、急ぎ足で去って行った。
和臣たちに助けてもらった女子二人は頭を下げてお礼を言う。
彼女達を帰して、体育教官がフウッとため息を付く。
「まさか松蔭にまで被害が来るとはな。」
「えっ?」
彼が言うには、翠嵐学園の予餞会終了後。
ジュリエットが松蔭の生徒であるという情報が流れる前に、既に親衛隊たちが近隣の学校で、今と同じように待ち伏せをしては、トラブルを起こしているらしい。
その度にPTAからは『何とかしろ!』と怒られ、近隣校の教員達が警戒をしていたのだが、今月に入ってから更にトラブルが続出しているのでいい迷惑だった。
続出した原因が、翠嵐学園の生徒が聞いた生徒会顧問の電話。
これに関しては和臣も知っている。
先日、律と待ち合わせをしたカフェでその話を聞いているからだ。
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