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「悩むぐらいなら、最初からジュリエットにならなきゃよかったのよ。」
「!!!!!!」
驚かずにはいられない。
顔を俯かせていた和臣は、麻衣の言葉に驚きを隠せず、ばっと顔を上げて彼女を見た。
麻衣は至って普通の態度。
(ばれている?何で甘粕に?)
頭が大パニックを起こしている。
和臣がジュリエットを演じているのを知っているのは、翠嵐学園の生徒会役員の男子メンバーと家庭部の部員。
そして新庄だけだ。
絶対にばれないように細心の注意を払ったのに、なぜ麻衣が知っているのか?
固まっている和臣を見て、麻衣はふっと笑みを浮かべた。
そしてその答えを話したのである。
「あら、当たったの?まあ、おおよその見当は付いていたけどね。」
「何で知っているんだよ!新庄先生しか話していないのに!」
「あれ?話していなかったっけ?あたしの彼氏、翠嵐学園の卒業生だって。」
「・・・・・まさか。」
「ええ。予餞会に参加したの。彼氏の招待で。」
悪夢だ。
絶対にばれないように衣装も化粧も完璧だったのに、麻衣には人目でばれていたのだ。
足を怪我しているので、頭を抱えてしゃがみ込むことが出来ない。 落ち込んでいると、麻衣がフッと笑いながら更に話を続けた。
「ジュリエットは完璧だったよ。あたしもポロッと涙を流したし。」
「言うな・・・。」
「何で春日だと判ったのは、あの予餞会でジュリエットが足を怪我していたって聞いたから。その後、春日が松葉杖姿で登校したから、ピンと来たのよ。」
「甘粕・・・。」
「それに、彼氏から菅生の恋人が同性だっていう話を聞いていたらしいからね。」
「誰からそれを?」
「さあ。そこまでは教えてくれなかったけど。でも、いいんじゃない?同性だろうが、異性だろうが、恋愛には関係ないし。」
意外だった。
麻衣なら律との関係を全否定されると思っていた和臣だが、彼女は否定しない。
むしろ、肯定している。
毒舌で怒らせたら怖いと思っていた麻衣が、実は寛大な性格であることを和臣は初めて知ったのだ。
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