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断る理由もなく、和臣は律の好意に甘えることにした。
普段も律は和臣には優しいのだが、時々鬱陶しく思えてしまうのだ。
(俺は男なんだから!女じゃねえ!)
思っていても、口には出せない。
いや、口に出しても決まって言われるのが、『俺がカズにそうしたいだけだ。』という返答。
どうやら律は好きな子は大事にしたいタイプらしい。
嬉しいような、ありがた迷惑のような、複雑な心境だ。
それでも邪険にしないのは、和臣も律を好きだから。
考え込んでいると、電車が到着した。
律は和臣に合わして電車に乗ると、同時にドアが閉まった。
ドアが閉まり、電車が動き出す。
邪魔にならないような場所で立っていた和臣は、先程の正門での出来事を律に話した。
すると律は驚いた顔で、和臣に聞き返したのだ。
「親衛隊?まだ存続してたんだ。」
「存続って・・・。お前、知っているのか?」
「ああ。翠嵐の女子が結成しているのとは別に、他校の女子が結成しているのを、クラスの奴から聞いたことがある。」
「・・・・。」
呆れてしまい、絶句する。
すると律が頭を掻きながら言い難そうに言葉を続けた。
「あんまりカズに話したくないんだけど・・・。」
「?」
「他校の親衛隊の隊長の岩国早百合だったかな?付き合ったことがあるんだ。」
「・・・マジ?」
「マジです。カズと知り合う前に。一ヶ月で終わったけどな。」
そう言って、律は苦笑した。
笑ってごまかせると思ったのだろうか?
苦笑している律の口から出た爆弾発言に、和臣は驚きと同時にイラッとし始めた。
和臣と付き合う前の律は、女関係にだらしなかったのは知っている。
知っていながらも、ムカムカしているのは、嫉妬からだ。
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