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外見はお嬢様だが、中身は男勝り。
一応、年上の彼氏がいるのだが、果たして彼の前では猫を被っているのだろうか?
(いや、あのまんまなんだろうな。彼氏に同情する。)
横目で麻衣を見ながら、和臣はそう思っていた。
いや、その場に居る麻衣以外の全員がそう思っているだろう。
しばらく桜を眺めていると、背後から和臣たちを呼ぶ声が聞こえてきた。
全員が一斉に後ろを振り返ると、生徒会顧問で数学担当の新庄順一【シンジョウジュンイチ】がゆっくりとした歩調で歩きながら、彼らに向かっていた。
「新庄先生?」
「おう!春日、足の具合はどうだ?」
「はい、来月にはギプスが外れるので。後はリハビリを受けながら通院予定です。」
「そうか。災難だよなあ。階段から転んで足を骨折するとは。」
「ただ、ドンクサイだけじゃない?」
(甘粕・・・!)
ザックリと一言で切り捨てた麻衣に対して、和臣は眉間に皺を寄せながら怒りを我慢する。
他のメンバーはハラハラした状態で様子を見、新庄はケラケラと笑っていた。
「甘粕はきついなあ。まあ、大事にしろ。」
「ところで先生。僕達を呼んでいましたけど・・・?」
険悪なムードの和臣と麻衣の隣りで、理人がきょとんとした顔で新庄に尋ねた。
すると新庄が思い出したような口調で、元生徒会メンバーに伝えたのだ。
「おう!すっかりと忘れそうになった。」
「先生!」
「まあまあ。有馬が泣き言を言ってきたから、引継ぎを交代してくれ。」
「・・・・・はっ?」
耳を疑った。
引継ぎを交代?
二ヶ月前、ほぼ生徒会業務を放棄していた彰文に、麻衣は誠意を見せる条件として、引継ぎを一人で全てやるようにと提示した。
それを彰文は受けたはずだ。
「泣き言?彰文が?」
和臣は思わず聞き返した。
すると身上は少し困った表情をして、事情を説明した。
どうやら塾と予備校の両方で行われた全国模試の成績が思っていた以上に悪い結果になり、志望している大学の合格ラインが危ういらしい。
そのため、勉強に専念させて欲しいと、新庄にお願いしてきたそうだ。
当然、新庄は『他のメンバーと交わした条件だろ?』と言って、撤回をさせようとしたのだが、無駄に終わった。
更に、新生徒会役員からも『彰文では無理だ!』というクレームまで来たらしい。
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