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一応、教師なので真正面に向かって文句を言うのは絶対に出来ない。
苛立ちながらも作業を手伝っていると、新庄が職員室の入口の方に視線を向けた。
そして『おっ!』と声を上げる。
「佐久間じゃないか!」
「えっ?」
(佐久間って・・・。)
和臣が知っている限り、佐久間というのは二月に新生徒会長に就任したばかりの二年生。
佐久間晃司【サクマコウジ】以外、思い当たらない。
そう思いながら入口の方を向いてみると、そこにはもう一人の生徒会顧問の先生と一緒にいる晃司が立っていたのだ。
新庄に呼ばれて、晃司は彼の方に視線を向ける。
その時、丁度和臣とも視線が合い、晃司はニコッと笑ったのだ。
(まあまあイケメン・・・かな?)
そう思っていると、晃司が一礼をして教師と別れると、早足で二人に向かってきた。
「新庄先生!それに、春日先輩!」
「おう!新生徒会長。仕事は慣れてきたか?」
「いいえ。有馬先輩の引継ぎが上手くいっていないですから・・・。」
(何?俺に救いを求めていますってか?)
晃司に気付かれないように、和臣の眉間に皺が寄る。
新庄は笑いながら一言。
「仕方ないだろ。春日は怪我人なんだから。来月には復帰するから、もうちょっと待て。」
「はい、それは承知しています。」
そう言って晃司は笑みを浮かべる。
晃司の笑みを見てまた心の中で思ってしまった。
(ああ。こいつは帰来のタラシかも・・・。)
初めて律と会った時のを思い出してしまった。
呆れながら晃司を見ていた和臣だが、当の相手は和臣を嘗め回すような視線で見つめている。
もちろん、和臣は全く気付いていない。
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