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それから二週間。
和臣のギプスが外れ、一応全快した。
外してからも週に一回は通院することが条件で、早めにギプスを外すことを約束したのだ。
(これで松葉杖ともお別れだ!)
不自由な生活から解放された和臣は、真っ先に律のマンションへと訪ねて行った。
いつものようにメールで行く旨を伝えて、電車に飛び乗った。
まだ普通に歩くまでにはいかないが、松葉杖があるのとないのとでは全く違う。
目的地に到着すると、改札口では律が出迎えてくれた。
どうやら彼なりに心配らしく、迎えに来てしまったのだろう。
「待ったか?」
「いいや!でも、良かったな?ギプスが外れてさ。」
「ああ。まだ歩きがぎこちないけどね。」
改札口から離れたものの、やはり和臣の歩き方は少しだけぎこちなかった。
そんな彼に律は歩調を合わす。
さりげないフォローも和臣だけの特権だ。
ゆっくり歩きながら、二人はいつものカフェへと入った。
そして好きなものを頼み、いつものように世間話をしようとした途端、黄色い声が上がったのである。
(何だ?)
和臣はもちろん、律も驚きを隠せなかった。
「律様よ!」
「キャー!私服姿も素敵!」
どうやら律の親衛隊のようだ。
どこから情報を掴んだのか判らないが、ここのカフェが律のお気に入りだというのを得たらしい。
黄色い声を上げた彼女達は律の側に行こうと、駆け出したのだ。
(店の人に迷惑だろうが!)
イラッと来たのか、和臣が文句を言おうとしたその時だ。
親衛隊の一人が和臣とぶつかり、更に後から来た親衛隊が『邪魔よ!』と履き捨てるように文句を言うと、和臣を突き飛ばしたのである。
まだ足が不完全だった和臣はバランスを崩してしまい、後ろの方へと倒れ込んでしまった。
ガツッ!
運悪く、ギプスを外したばかりの足が椅子にぶつかる。
「いっ!」
強く打ったのか、和臣が顔をしかめながら声を上げる。
「カズ!」
親衛隊に突き飛ばされた和臣を見て、律は彼女達に『どけ!』と一喝すると、和臣の側に歩み寄った。
そしてゆっくりと体を起こして、心配する。
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