問題発生!

5/22
前へ
/93ページ
次へ
 それから二週間。  和臣のギプスが外れ、一応全快した。  外してからも週に一回は通院することが条件で、早めにギプスを外すことを約束したのだ。 (これで松葉杖ともお別れだ!)  不自由な生活から解放された和臣は、真っ先に律のマンションへと訪ねて行った。  いつものようにメールで行く旨を伝えて、電車に飛び乗った。  まだ普通に歩くまでにはいかないが、松葉杖があるのとないのとでは全く違う。  目的地に到着すると、改札口では律が出迎えてくれた。  どうやら彼なりに心配らしく、迎えに来てしまったのだろう。 「待ったか?」 「いいや!でも、良かったな?ギプスが外れてさ。」 「ああ。まだ歩きがぎこちないけどね。」  改札口から離れたものの、やはり和臣の歩き方は少しだけぎこちなかった。  そんな彼に律は歩調を合わす。  さりげないフォローも和臣だけの特権だ。  ゆっくり歩きながら、二人はいつものカフェへと入った。  そして好きなものを頼み、いつものように世間話をしようとした途端、黄色い声が上がったのである。 (何だ?)  和臣はもちろん、律も驚きを隠せなかった。 「律様よ!」 「キャー!私服姿も素敵!」  どうやら律の親衛隊のようだ。  どこから情報を掴んだのか判らないが、ここのカフェが律のお気に入りだというのを得たらしい。  黄色い声を上げた彼女達は律の側に行こうと、駆け出したのだ。 (店の人に迷惑だろうが!)  イラッと来たのか、和臣が文句を言おうとしたその時だ。  親衛隊の一人が和臣とぶつかり、更に後から来た親衛隊が『邪魔よ!』と履き捨てるように文句を言うと、和臣を突き飛ばしたのである。  まだ足が不完全だった和臣はバランスを崩してしまい、後ろの方へと倒れ込んでしまった。  ガツッ!  運悪く、ギプスを外したばかりの足が椅子にぶつかる。 「いっ!」  強く打ったのか、和臣が顔をしかめながら声を上げる。 「カズ!」  親衛隊に突き飛ばされた和臣を見て、律は彼女達に『どけ!』と一喝すると、和臣の側に歩み寄った。  そしてゆっくりと体を起こして、心配する。  
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

844人が本棚に入れています
本棚に追加