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「大丈夫か?カズ」
「ああ。でもちょっと打ったみたいだ。」
律が表情を青ざめて和臣を心配すると、親衛隊たちがざわざわと騒ぎ出す。
律が一喝したのも、目の前で他人を心配しているのも、彼女達からすれば信じられない行動だったからだ。
「君達!彼に謝れ!」
律が場所をわきまえず、怒鳴る。
店の人間もどう対処をすればいいのか困惑しており、怒鳴られている親衛隊も同様に困惑している。
「彼は怪我が完治したばかりなんだ!謝れよ!」
「律、大丈夫だから落ち着けよ。」
何とか彼を落ち着かせようと、和臣が横から口を出したのだが、今の律には全く聞こえていないらしい。
怒りで頭に血が上っているようだ。
親衛隊の一人が、律の怒りに耐えられないのか涙目になっていく。
(まずい!女に泣かれるのは嫌なんだ!)
いくら言っても律は耳を貸さない。
それどころか、ドンドン口調が荒くなっていく。
怒ってくれるのはありがたいが、勘弁して欲しい。
それがだんだんと和臣の苛立ちを煽りだしたのか。
我慢の限界だった。
バシッ!
和臣は『ごめん!』と心の中で謝ると、律の後頭部を平手で叩いた。
叩かれた律も、それを見た親衛隊も驚きを隠せない。
「いい加減しろ!このバカタレ!場所をわきまえろ!店員さんが困っているだろうが!」
「カズ・・・?」
「怒鳴るんなら、勘定を済ませて外でやれ!」
「・・・・・。」
その場にいた全員が呆気に取られる。
和臣は財布から注文した分の金額をテーブルに置くと、律の腕を掴み取り、足を引き摺りながら店を出る。
出る際、和臣は店員に頭を下げて謝るのを忘れなかった。
店を出て、律のマンションへと向かう道を進んでいく。
(ああ。あの店には当分行けないな・・・。)
何気にハーブティーやフレーバーティーが気に入っていた和臣にとっては、かなりの痛手だ。
だが、これ以上大事にはしたくないがため、仕方なく店を出た。
どれぐらい歩いただろう。
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