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さっき、カフェで椅子に当たった足が痛み出したのか、和臣はその場に立ち止まったのだ。
(やばいかも・・・。)
打った箇所が熱を帯びている気がする。
額にジワッと脂汗が浮かぶ。
それを見てハッと我に戻った律は慌てた。
「大丈夫か!カズ!」
「もう・・・限界かも。」
「病院に行くか!」
「いい。湿布を貼れば何とか。でも、歩くのは限界・・・。」
久々に聞いた和臣の弱音に、律は大慌てした。
「と、とりあえず、俺の部屋に行こう。湿布もマッサージも部屋ならできるから。」
「・・・・・。」
(こいつ、相当パニくっているな・・・。)
呆れながらも、律の背中に乗っておんぶをしてもらうと、律はダッシュで部屋へと向かった。
十分後、部屋に着いた律は和臣をベッドに寝かせると、救急箱を探しに寝室を出た。
ドアの向こう側で何かを落とす音や、崩れる音が聞こえる。
「おいおい・・・。」
(こんな情けない律を見たら親衛隊が泣くぞ・・・。)
内心そう思いながらも、律の情けない部分も、混乱する部分も、優しい部分も、怖い部分も、全てが和臣だけが側で見れる特権だ。
フッと笑みを浮かべながら、和臣は自分の足を擦っていると、律が湿布とはさみを持って寝室に入って来た。
和臣の側に腰を下ろし、はさみで湿布を丁度いい大きさに切る。
そして透明部分をはがし、和臣の赤くなっている部分にそっと湿布を貼って、完了。
湿布特有の冷たさが肌を伝って、痛みの部分に浸透する。
「ありがとう、律。」
「ううん。むしろ謝らなくちゃいけないのは、俺の方だ。」
はさみと残りの湿布をベッドヘッドに置き、律は和臣を抱き寄せて謝った。
自分のせいで和臣の治りかけた怪我をぶり返してしまうところだった。
それが自分でも許せなかった。
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