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ギュウッと、和臣を抱き締めている腕に力が入る。
律が自分を責めているのが判る。
和臣は背中に腕を回しながら律に言った。
「お前のせいじゃないよ。悪いのは、場をわきまえない親衛隊だ。だからそう、自分を責めるなよ。」
「でも・・・。」
「俺もどんくさかっただけだし。な?」
そう言って、和臣は律から少しだけ離れると、あやすように彼の唇に自分のを押し当てた。
これ以上、和臣のせいで律が苦しむのを見たくないからだ。
触れるだけのキスをした和臣を見て、律はフッと笑みを取り戻すと、再びキスを交わした。
触れるだけのキスが、徐々に深くなっていく。
互いに角度を変えながら、お互いの唇の感触と甘さに酔いしれる。
激しいキスを終えて、律が耳元で囁く。
「カズが欲しい。カズを抱きたい。」
「・・・あんまり、無茶はするなよ?」
「ああ。」
そういって数分後。
律の顔面に、和臣の足による鉄拳を受けたのは、いうまでもなかった。
それでも二人は数ヶ月ぶりの甘い時間を共有した。
怪我のせいで悪戯しか出来なかったことも、今日からは全て出来る。
和臣が泣きながら『止めろ!』と言っても、全く耳を貸さずに、律はもっと和臣の声が聞きたくて意地悪をした。
その度に和臣は涙を流しながら律を受け入れてくれる。
鉄拳を受けようが、怒られようが、天邪鬼な和臣が素直になるのはこういう時だけ。
たくさんの口付けと、たくさんの甘い言葉。
彼を抱きながら、律は思っていた。
『和臣以外の人間は、全て敵だ!』
親衛隊なんて、どうでもいい。
和臣が側で笑ってくれるだけで十分だ。
たくさん声を上げて、たくさん感じてくれて、余りにも久々の行為で失神してしまった和臣を抱き締めながら、律は耳元でこう告げたのだ。
「愛しているよ、カズ」
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