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「・・・で?また松葉杖の生活に戻ったの?」
冷たい口調で麻衣が足元を指で指しながら指摘すると、和臣は黙り込んでしまった。
あの後、夜になっても腫れと痛みが治まらなかったので、和臣は父親に頼んで車を出してもらい、病院へと行った。
骨には異常はないものの、打撲したと思われる痣が大きく出来たので、しばらくは湿布と念のために松葉杖で生活をするようにとのお達しを受け、現在に至った。
簡単に言えば、軽い捻挫である。
ただ、骨折した部分だからということで、医者から『一週間は松葉杖で生活してね。』と言われたので、また不便な日々に戻ってしまったのだ。
「すぐに病院に行けばよかったものの・・・。」
「・・・・。」
麻衣の一言一言が背中に刺さり、非常に落ち込む。
側では佳枝と理香が苦笑し、理人と透は『哀れな奴。』と同情されている。
ギプスが外れたら、生徒会の引継ぎをする。
先月、みんなで話し合って決めたはずなのに、和臣は自分の怪我を悪化させてしまった。
同情する余地がない!と麻衣が判断したのだ。
「いいよ。松葉杖を使いながらも、引継ぎはするよ。」
「引継ぎっていうよりは、顧問並?」
「はっ?何で!」
麻衣の一言に、和臣が声を荒げる。
すると麻衣はお菓子を食べながら説明した。
本来、生徒顧問である新庄が今年から運動部の顧問を兼任された。
ちなみに、兼任されたのは水泳部。
何でも新庄は昔、水泳で国体まで出場したほどの成績を保持しており、それに目をつけた元々いた顧問が新庄をスカウトして、兼任することを条件に承諾させたのだ。
兼任、といっても割合としては水泳部が九で生徒会が一。
しかもそれを承諾した理由が、和臣を生徒会顧問の代理をさせるというのだ。
もちろん、他にも生徒会顧問はいるが、新庄以外はほとんど生徒会業務のはノータッチだ。
そこで、和臣の出番である。
推薦で既に合格が決定している和臣を特別生徒会顧問にして、指導をしながら役員と教師の仲介役になってもらうことで、スムーズに活動する。
いつの間にか、新庄が勝手に決めてしまったようだ。
しかも決まった日が、丁度和臣がギプスを外す日と重なっており、本人不在のまま可決されたのだ。
もちろん、仕組んだのは麻衣である。
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