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(この女、有り得ねえ!)
怒りを抑えながらも、麻衣を睨みつける。
それでも麻衣は平然とした態度で和臣を見る。
周囲はその様子を黙って見物していると、麻衣が一言。
「新庄先生が言っていたけど、七月の県予選後には生徒会顧問として復帰するって!」
「そういう問題かよ!」
(ああ。推薦枠を取らなきゃ良かった・・・。)
こういう時ほど、成績が良すぎる自分が憎らしい。
他のメンバーも一応は推薦枠で取っているものの、やはり会長代理として大活躍をしていた和臣が適任だと思ったのだろう。
自分たちの身を守るため、和臣を人身御供にしたのだ。
文句も言えない和臣は、しぶしぶと承諾する羽目になった。
(ああ。これで律とのデートが・・・・。)
だが、しばらくは会うのは控えた方がいいと思っている。
理由はカフェでの一件。
あの件以来、律は亮輔と一緒に行動するようにしたのだ。
理由は、亮輔がここ周辺の学校で最も恐れられているからだ。
亮輔曰く『先生とのデートの時間を惜しんで護衛しているのだから、ありがたく思えよ?』
律はがっくしと肩を落としているが、今の状況ではこれが一番である。
和臣だとまた今回みたいに、治り掛けた怪我をぶり返してしまう恐れがあるので、しばらくは会うのを控えることにしたのだ。
完全に会えないのは辛いので、亮輔に迎えに来てもらい、律の部屋に行くということに決めたのだ。
亮輔の都合が悪い時は、彼の恋人である健吾が時間を作って、車で迎えに来てくれることになっている。
健吾も亮輔から律と和臣が迷惑を被っている話を聞いて、怒りを感じたらしい。
どうやら健吾も一時期、似たようなことを体験したらしく、共感できると力説した。
(どうせ結城が一因だろうけど。)
顔を引き攣らせながらも、二人に協力をお願いした。
(まあ、人の好意は素直に受け取っておこう。)
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