波乱の予感?

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波乱の予感?

 季節は四月になった。  学校の周りを囲んでいる桜の木々が薄紅色に染まる。  県立松蔭高等学校の名物でもある『桜に囲まれた風景』と呼ばれている風景が、最も実感できる季節である。  三月にある出来事で右足を骨折。  全治二ヶ月と診断された元松蔭高校生徒会副会長である春日和臣【カスガカズオミ】は松葉杖をつきながら、一年に一度しか見れない風景を眺めていた。  その隣りには同じく元生徒会メンバーの和田町透【ワダマチトオル】、二村佳枝【ニムラカエ】。  そして須藤理香【スドウリカ】と須藤理人【スドウリト】の双子に、和臣と同じく元副会長の甘粕麻衣【アマカスマイ】の五人も、和臣同様に桜に囲まれている学校の風景を眺めていた。 「本当に、一年に一度しか見れない風景よね。それを名物に売り出そうなんて、うちの学校も落ちたもんだわ。」  相変わらずの毒舌を披露をしている麻衣を無視する。  二ヶ月前まで、このメンバーでよく生徒会が出来たと、和臣は心の中で思っている。  しかも新生徒会役員が決定した時、麻衣は当時の生徒会長である有馬彰文【アリマキフミ】に、引継ぎ全てを押し付けたのだ。 (もしかして、俺より厄介?)   生徒会のメンバーが全員そう思っているのだが、麻衣曰く『春日には勝てないわよ。』と笑いながら言った。 (そういう奴ほど、自分を知らないんだなあ。)  合同学園祭の時、麻衣は翠嵐側の作業を全て和臣に押し付け、自分は最も楽な松蔭側の仕事を受け持った。  後で判ったことだが、麻衣は内弁慶な性格なのか、他校の生徒や生徒会以外の人間や教師の前では猫を百匹ぐらい被っており、和臣たちの前では素を出していた。 (一時期の俺かよ!)  心の中で麻衣にツッコミをする。
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