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砂浜に一人の青年が倒れていた。
彼は金髪でボロボロになった服をきている。
そんな中、馬が向かってくる。その騎主は甲冑が擦れ合う音を発している……、つまり、騎士である。
その音は男のすぐ近くで止まった。
「あなた……、まさかダイン? 大丈夫ですか? 」
馬上から女性が声をかけた。
彼の名はダインというらしい。彼を知っている者のようだ。しかし、気がつかない。
「仕方がないですね……」
女性はそう言いながら、ダインを自分の馬に乗せ、手綱を引いて歩いていった。
幾分か立ち、空は夕焼けの赤にそまっている。今は海辺から少し離れた、野の道を歩いている。
「うっ……」
道中、ダインはそんな声をもらした。
「気がついたようですね」
「……ああ」
ダインは気絶から覚めた直後で意識がはっきりとしていない。
「私はツヴァイ・エルスレイヤー、ルーラシア騎士団の者です。」
「そうか、俺は……」
「ダイン・ヴェスタニエ……でしょう? 英雄の名前を知らないはずないですよ」
ダインが答えるよりも早くその名を言った。その答えにたいして、彼は首を傾げた。
「俺が、英雄……? 」
「そりゃあ、もう……」
その反応にツヴァイは嬉しそうに語り始めたが、ダインが神妙な顔で聞いている事にきずいたため話をとめた。
「どうかしましたか? 」
「すまないが、何も思い出せないんだ」
「本当ですか! つまり、記憶喪失? 」
飛び跳ねるほどの勢いで驚く、
「……そのようだ」
半ばその反応に引きながら、ダインは残念そうな顔をして答える。
「そうですか・・・」
ツヴァイはがっかりしながら、また歩を踏んでいく。
ダイン達は話す事がわからなくなり、しばらくの間沈黙がつづいた。
その後、一つの考えが浮かんだ。
「それじゃあ、俺の世話してくれないかな……。記憶がないと色々困るだろうし」
「わかりました! 」
ツヴァイは元気のある声で答えた。
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