153人が本棚に入れています
本棚に追加
「ん?」
俺は目を開け、周囲を見る
タクシーに乗っていたのを思い出し、さっきの夢を思い出す
昔の夢を見たのは、久々に帰ってきたからだろうか
タクシーの運転手は俺を見ながら言う
「兄ちゃんは管理局の人かい?」
俺はもう兄ちゃんと呼ばれる歳じゃないが答える
「まあ、そんなとこです」
一応制服を着てるからそれから判断したのだろう
運転手は最近の情勢を教えてくれる
JS事件を話す運転手に俺は苦笑する
俺がいない数年間にいろいろあったようだ。
できれば俺もJS事件には関わりたかったが残念ながら無理だった…
俺はタクシーに乗る前に買った花束を見て苦笑する。
「世の中うまくいかないもんだな」
俺の呟きが聞こえたのか運転手はそうだね~と言って運転に集中し始めた。
目的地である墓地に着き、タクシーを降りた。
花束を持ち、俺が用のある場所には女性の先客がいた。
たぶん俺が戻ってくることを何かで知ったんだろう。
彼女も今は本局で働いているはずだ。
「お久しぶりね、ライネス」
彼女は俺に気づき、微笑みながら声をかける。
「ああ、お久しぶり。リンディ」
記憶の中のリンディとまったく変わらぬ笑顔だ。
「……」
墓石の前で手を合わせ、俺は立ち上がる「戻ってくる度にここに来てるのね」
ここはクライドが眠る場所。
しかし遺体はないのだが…
俺は頷き、リンディを見る
「他に行くところもないしね」
「寂しいわね~、彼女とかいないの?」
俺の言葉にリンディは苦笑する
「何年も留守にする男を待てるやつなんていないよ」
俺は笑いながら言う。
「今日はこれからどうするの?」
話題を変えてくるリンディ。
「今からとりあえず本局に行って報告かな」
俺の言葉にリンディは呆れ顔をする
「まさか、本局の前にこっちに来たの?」
「いいんだよ。報告っても定期的に報告書を提出してたし。行っても挨拶ぐらいだしな。そんなことしてたら日が暮れるよ」
俺の言葉にリンディはため息をつく
「相変わらずね~」
「それに夜に墓地に来たくないしな」
おどけた様子で言うと、リンディは笑いながら
「何言ってるの。管理局最強の魔導士が…お化けが怖いわけないでしょう」
そう言った。
「勝手につけられた称号だよ」
俺はため息をつきながら呟いた
最初のコメントを投稿しよう!