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話は2年程前に遡る。
時間は、鳥や草木も眠る深夜。
街から20km程離れた所にある、鬱蒼と繁る森林の奥深く。
――ギャアッ、ギャアッ……
バキバキバキッ……――
静寂は突如、木々を薙ぎ倒す轟音と、目を醒ました鳥達の鳴き声に掻き消された。
「くっ……そ!畜生!あれがBランク討伐だ?冗談!どう考えてもAランクだ!討伐依頼書の内容が間違ってる!でなきゃ依頼書を作成した誰かが、あのバケモンの力量を量り損なったんだ!」
薄暗闇の中、男は討伐依頼書の内容と現実の差異に激怒しながら、土煙から勢い良く飛び出たかと思うと、息つく間もなく走り出す。
木々の隙間から月の光が差し、時折チラチラと男の姿が照らし出される。
髪は肩まで伸びたブロンド、Tシャツにジーンズのジャケット、幾つもポケットが付いたカーゴパンツ。
両腕にはゴツゴツとした重量感のあるガントレットを装備しているが、重そうな素振りは全く見せない。
男は肺に酸素を叩き込み、身体中の燃料という燃料を燃やし、ひたすらに走る。その後ろから……――
「ゴギャァァアア!!」
背丈8m以上はあろうかという、馬鹿でかい、サイに似た姿に鰐の様な大口の怪物が、その姿からは想像し得ない速度で追いかける。
男は密生する木々を縫う様にして逃げるが、一方の怪物はそんな物は物ともせずに、容易く薙ぎ倒し、轟音を上げて突き進み、二者の距離はじりじりと縮んでゆく。
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