第一夜

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女性は尚も男に向かって 「ばっかじゃないの!? ばっかじゃないの!?」 と罵声を浴びせ続けている。 「ぐ……だって、口から甘い匂いがして……」 悶絶状態から回復し、男がその場凌ぎの苦しい言い訳をしてみせる。 「はぐらかすつもり!?甘い匂い……あ、そういえば私のキャンディは……」 女性は言い訳をする男に更に腹を立てて捲し立てるが、男の発した「甘い匂い」という言葉で、キャンディがどこかに飛んで行ったのを思い出し、ウロウロと地面に視線を這わせ始めた。 「キャンディ?さっきの甘い匂いはキャンディの匂いだったのか。というか、急にぶつかってしまって悪かった。こんな場所に人がいるとは……お?」 キャンディを探し右往左往する女性を目で追っていた男は、女性から15m程向こう側に、唸りながら様子を窺っているサイのような怪物がいるのに気付いた。     「……このバケモンの事、すっかり忘れてた」   実は、男が繁みから飛び出した直後に怪物も、この開けた場所へ飛び入っていたのだが、怪物は女性の存在に気付き、攻撃を躊躇っていた。
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