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少女はすぐに弘樹から飛び退けた。そして深々と頭を下げて謝りまくる。
「ごめんなさい! ごめんなさい! 急いでいたものでつい……て、貴方は昨日の―――」
「よっ。また会ったね」
「本当にごめんなさい。命の恩人さんにぶつかっちゃうなんて」
「いや、気にしなくてもいいよ。で、何でここにいるのさ? 人を探してるんだろ?」
「そ、そうなんですけど……」
また少女は言い難そうに目を逸らした。しかしここで会ったのも偶然とは思えず、とにかく探している人間の名前だけは聞いてみることにする。
「探している奴って、この学校の人間なんだろ? 一緒に探してやるよ。それとも、やっぱり絶対他人には言えないのか?」
そう聞くと、少女は軽く溜息を吐いて首を横に振った。
「本当は言っちゃいけないんですけど…………お詫びに教えてあげます。わたしは、アンドー・ヒロキさんという方を探しているんです。ご存知ですか?」
今、彼女は誰の名を口にした?
間違いなく安藤弘樹を探していると言った。
まさか目の前にいる自分がその弘樹だとは夢にも思っていないだろう。否、弘樹自身も驚愕のあまり声が出てこない。だが確認のために声を震わせながら質問した。
「ごめん……誰を探してるって?」
「だから、アンドー・ヒロキさんを探してるんです。たしか、火を操る力を持っているとか。ご存知ないですか?」
「いや、知ってる。安藤弘樹は…………この俺だ」
「ふぇえ!? 本当ですか!?」
「ああ。ほら」
少女の目の前に右手を出し、軽く集中して能力を解放すると手の平から小さな炎が舞い上がる。
それを見た少女は目を輝かせながら手を叩いて喜び、興奮のあまり弘樹の胸に抱きついてきた。
「うわぁ! やっと見つけました!!」
「お、おい! 落ち着けって」
慌てて少女を引き離した弘樹は突然のことについていけず、軽く息を切らしながら頭のなかで何から聞けばいいのか考えていた。まずは名前から聞くのが常道、その後に自分を探していた理由を聞くのがベストだろうと弘樹は判断した。
「落ち着いた?」
「はい。度々すみません。ちょっと興奮しちゃいました」
「まず始めに聞きたいんだけど、君は誰? どこから来たんだ?」
「あ、そのことについてはここだと少しマズイので、あの公園に来てもらえますか? 人目についたら困るんです」
「え? 俺これから授業があるんだけど……?」
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