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「授業なんてサボっちゃえばいいんですよ! さあ、行きましょう!」
と、少女は元気良く起き上がって弘樹の袖を掴むと物凄い勢いで駆け出す。
「わ、分かったから袖を引っ張るな!!」
弘樹の叫びは冬の空に虚しく響いた……。
無人の公園に辿り着き、少女は踊るように体を回して弘樹に向き直る。
しかし弘樹は少し伸びてしまった袖を擦っていた。
長い話になりそうなので、弘樹は少女にベンチに座るように言ってオレンジジュースを奢ってやった。開け方まで教えなければならなかったが。
兎にも角にも、遠くで始業のチャイムが鳴るのを聞きながら少女の話が始まった。
「えっと、まず何から話せばいいんでしょうか?」
「俺に聞くなって。まあ、とりあえず自己紹介が基本じゃないか?」
「そうですね。わたしの名前は、キヌアっていいます。よろしくお願いしますね」
「キヌア……か。何処から来たんだ?」
「はい、カルナイン王国から来ました」
聞きなれない国名に首をかしげる。
「カルナイン? 聞いたことがない国だな……」
「それはそうですよ。わたしたちが暮らしているカルナインは、この世界にはありません。わたしはこことは別の世界から来ました」
別の世界から来た……確かにキヌアはそう言った。
だが、別世界の国から来たなんて言葉が容易に信じられるわけがない。
――まあ超能力を使える自分が言うのもなんだけど……。
しかしどうもキヌアが嘘を言っているようには見えない。
余談だが、剣を扱う者は自然と相手の心理を読み取る術を覚える。試合になったときに相手の動きを読むためだ。
特に心の感情を表しているのが目の表情だ。キヌアの目は、本当に純真な光を放っている。
しかし、弘樹は一応疑ってみることにし、完全な棒読みで答えた。
「へ~、ソレハスゴイネ」
「ああ!! 信じてませんね!?」
分かりきっていたことだがキヌアが怒った。そりゃもう頬を膨らませて眉間に皺を寄せており、ハッキリ言って全く恐くない。むしろ可愛げがある。
キヌアの和やかな怒りっぷりに弘樹は思わず苦笑する。
「くくく……悪い。冗談だよ。キヌアが嘘を言っていないのは分かる」
「え? 何でですか? 怒っておいて変ですけど、わたしなら絶対に信じませんよ?」
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