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「じゃあ信じた俺が馬鹿みたいじゃないか。まあ、とにかくキヌアの言うことは信じるよ。目が嘘を言ってないもんな。それに俺も超能力を使うんだから、異世界云々について文句は言えないし。まあ、まだ半信半疑ではあるけどさ」
「でも嬉しいです。わたし、このお話をして変な子だと思われたらどうしようって思ってたんです」
――大丈夫。十分変な子だから……と言うのは止めておこう。
「で、なんで俺を探してたんだ? わざわざ別の世界から来るなんて」
「はい。えぇと、どう説明したらいいんでしょうか――」
人差し指を顎にくっ付けて少しおどけながら、キヌアの説明が始まった。
曰く、キヌアたちが住んでいる世界には、大昔に世界を救ったという偉大な英雄が残した予言がある。
その一節に、異世界から炎を操る者がやってきて再び世界を滅ぼそうとする闇の王を討ち果たすというのだ。
一体どこのRPGなのかと呆れてしまう。
確かに自分は火を操れる。
が、それは何かの隠語の可能性もあるのだ。火を扱う職業ならば幾らでもあるだろう。まあ、何度も言うようだけど超能力者である自分がとやかく言うのもおかしいけどさ。
「―――というわけで、ヒロキさんには是非ともわたしたちの世界に来てもらわなきゃいけないんです」
「そう言われてもな~。そもそも、その予言にあるのは本当に俺なのか? 確かに異世界の人間で火を操って剣も扱えるけど、イマイチ確信が持てない」
「ヒロキさんで間違いありません! 絶対ですよ」
「う~ん。第一、どうやってキヌアの世界に行くんだよ?」
「あ、それは大丈夫です。えっとぉ……」
キヌアは上着のポケットに手を突っ込んで何かを探り始め、取り出したのは小さな麻袋だった。
その中に指を入れて何かをつまみ出し、手の平に乗せて真珠くらいの真紅の宝玉を見せてきた。
しかし、これが異世界へ行くのと何の関係があるというのか?
「これは?」
「世界と世界を繋ぐ次元の扉を開けるための宝石です。扉といっても、大きな溝のようなものらしいんですけど、まだ使ったことがないから分かりません」
「分からないって……大丈夫なんだろうな?」
「はい! きっと大丈夫です……多分」
最後の方だけキヌアは目を逸らして呟いた。一気に不安がヒートアップしてくる。
そもそも弘樹はまだ行くとは一言も言ってない。
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