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決断を迫られた弘樹の額に一筋の汗が流れた。
――どうする? このまま大人しく荷物を渡すか? いや、それは論外だ。
荷物を渡したら、シクルスの書状も見つかって、国王の使者だって知れたら命はない。なら、答えは決まっている!
弘樹は深く息を吸って、腰の長剣を抜いた。
「ヒロキさん!」
「お前は下がっていろ。ギルド、キヌアには手を出すなよ?」
「ああ。女子供に手を出すことは掟に反するからな。安心しろ。しかし、嬉しいぜ。お前が期待通り骨のある奴だったことが」
「褒められても嬉しくないね。さっさと始めようぜ……」
見たところ、ギルドに得物は無い。
武器のない相手に剣を向けたくはないが、状況が状況だ。止むを得ない。
だがギルドは笑っている。
無防備の状態で、頼りの仲間たちも離れているというのに、ギルドは未だに余裕の笑みを浮かべていた。
「くっくっく、それでいい。それじゃおっぱじめるぜ! 相棒!!」
ギルドが天高く右腕を伸ばすと、ギルドの手を中心に猛烈な風が巻き起こり、弘樹は甲板に剣を突き刺して、必死に飛ばされないように踏ん張った。
そして風が収まり、眼を開けてみると、いつの間にかギルドの手には二メートルほどの銀の槍が持たれている。
形状は鯨銛によく似ていた。
「どこから……槍が?」
「驚いたか? だが、すぐに落ち着かせてやるぜ!」
二、三回槍を回転させながら、ギルドは弘樹に向かって踏み込んだ。
すぐに弘樹も迎撃の態勢を取る。
互いの間合いに入り、ギルドが槍を突き出し、弘樹が剣の刃を穂先に当てて上手く受け流す。
槍の体に刃が擦れ、激しい火花を散らしながら二人は交差した。
だが息をついている余裕など無い。
すぐにギルドの攻撃が繰り出された。
横に振るわれた槍を屈んで回避し、今度はこちらから剣を振り下ろしたが柄で防がれ、さらに剣を横に振るったがそれも防がれる。
また、ギルドから繰り出される猛烈な槍の連撃に弘樹は舌を巻く。
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