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普通、槍は一度攻撃した後は持ち直す必要があるというのに、ギルドの攻撃にはその動作が一切無い。
穂先で突きかかり、受け流されれば柄で打ちかかり、攻撃されれば最小限の動きで弾いて再び怒涛の攻撃を繰り出してくる。
それらは全て急所狙いの必殺ばかり。
しかも時たま槍を回転させるので、いつ穂先が襲い掛かってくるか予想が出来ない。
まるで嵐……というよりは、全てを薙ぎ払う竜巻の如くであった。
そもそも弘樹は今まで槍を相手にした経験など無い。
苦戦は必至であった。
だが弘樹は、全く隙が無い動きに驚きながらもかなり善戦していた。
――くそっ! 防ぐので手一杯だ!
こっちから仕掛ける隙が無い!
でも……ギルドは師匠ほど速くない。
上手くいけば、やれる!
そう思えたのは修行の成果だろうか。
もう何合目かも分からないが、ギルドの振り下ろしてきた槍を弾いたとき、一瞬ではあるが隙が生まれた。
――今だ!
「ッチ!」
流石にギルドも自身の隙にも敏感なようだ。
わき腹に迫る剣の切っ先を見た瞬間、ギルドは穂先とは反対側の先端で弘樹の剣を弾き、一度大きく跳躍して後退した。
すぐに弘樹は剣を構えたが、ギルドは槍を肩に担いで高らかに笑う。
「はっはっは! 楽しいぜ! こんなに楽しい喧嘩は久しぶりだ!」
「なに!?」
「やっぱりお前はオレが見込んだ通りの男だ! ますます気に入ったぜ!」
「ふざけるな!! 早くかかってこい! お前の楽しみに付き合ってる時間は無い!」
「ああ、オレもそのつもりだ。いつまでも手加減してるのは性分じゃねぇ。いくぜ!」
ギルドが槍を低く構えると、ギルドの全身から猛烈な風が吹き起こった。
さっきとは比較にならないほどに強く、速い風だ。
――この風……ギルドが起こしているのか? まさか、アイツも……。
弘樹が考えるよりも先に、その答えをギルドが言った。
「オレは風の力を操る者。そしてコイツは、風を纏う剛槍ウィンディルグ! 三分耐えたら褒めてやるよ!」
ギルドが踏み込んだ。
さっきのスピードとは比較にならない。
狙うはただ、風に圧されている弘樹の心臓。
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