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促されて席に座り、机の上に並べられた料理を見て唖然となった。
まず眼に飛び込んできたのが、大量の骨付き肉だ。しかも焼いただけ。
それが皿の上に山のように詰まれており、ほかにあるものといえばポテトサラダと魚のスープ。
ギルドは『いただきます』も言わずに肉から飛び出している骨をつかむと、そのまま大きく口を開けて齧り付いた。
「おお、うめぇ! ほら、お前らも食えよ」
「あ、ああ」
弘樹も肉を一つ取って齧ってみると、これが中々いける。
焼いただけなので余計な味が一切無く、肉本来の味を楽しむことが出来る。
しかし、男である弘樹やギルドならともかく、女の子であるキヌアにこの食事は如何なものだろうか。
弘樹はナイフを使って肉を切り分けてやろうかと思っていると、キヌアは意を決したように肉の山をにらみつけ、手を伸ばして一切れ掴み、小さな口を眼一杯に開けてかじりついた。
とても豪快とはいえないが、キヌアは口周りを脂まみれにしながらも肉を喰らっていく。
それを見ていた弘樹は溜息を吐き、全く減っていないキヌアの肉塊を奪い取った。
「ふぇ?」
「お前にその食べ方は似合わない。俺が小さく切り分けてやるから、それを食べろ」
「す……すみません」
既に五個目の肉を平らげたギルドは、その様子を白い骨を口に咥えたまま眺め、フッと笑った。
「ほほぅ。お前らそういう関係だったのかぁ。お熱いこったねぇ」
「違う。俺とキヌアはそういうのじゃない」
「へいへい。まあ、そういうことにしておいてやるよ」
含みのある笑いを飛ばしながら、ギルドは酒の瓶を傾けた。
先ほどまでと全然違うギルドの雰囲気に弘樹は驚く。
戦っているときは竜巻のように激しいのに、今のギルドはまるで微風のようだ。
本当に風のような男なんだな、と弘樹は内心呟いた。
ワイルドな食事が終わって、弘樹とキヌアは、特別にギルドの部屋……船長室に入ることを許された。
「まあ、散らかってるが、気にするな」
中に入ると本当に散らかっていた。
円卓の上には海図が散乱し、ベッドの周りには本が散乱し、本棚に並んでいる本たちも全部バラバラ。
ただ、窓際に置かれているボトルシップだけは綺麗に整列していた。
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