第9章 竜巻と呼ばれた男

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 促されて席に座り、机の上に並べられた料理を見て唖然となった。  まず眼に飛び込んできたのが、大量の骨付き肉だ。しかも焼いただけ。  それが皿の上に山のように詰まれており、ほかにあるものといえばポテトサラダと魚のスープ。  ギルドは『いただきます』も言わずに肉から飛び出している骨をつかむと、そのまま大きく口を開けて齧り付いた。 「おお、うめぇ! ほら、お前らも食えよ」 「あ、ああ」  弘樹も肉を一つ取って齧ってみると、これが中々いける。  焼いただけなので余計な味が一切無く、肉本来の味を楽しむことが出来る。  しかし、男である弘樹やギルドならともかく、女の子であるキヌアにこの食事は如何なものだろうか。  弘樹はナイフを使って肉を切り分けてやろうかと思っていると、キヌアは意を決したように肉の山をにらみつけ、手を伸ばして一切れ掴み、小さな口を眼一杯に開けてかじりついた。  とても豪快とはいえないが、キヌアは口周りを脂まみれにしながらも肉を喰らっていく。  それを見ていた弘樹は溜息を吐き、全く減っていないキヌアの肉塊を奪い取った。 「ふぇ?」 「お前にその食べ方は似合わない。俺が小さく切り分けてやるから、それを食べろ」 「す……すみません」  既に五個目の肉を平らげたギルドは、その様子を白い骨を口に咥えたまま眺め、フッと笑った。 「ほほぅ。お前らそういう関係だったのかぁ。お熱いこったねぇ」 「違う。俺とキヌアはそういうのじゃない」 「へいへい。まあ、そういうことにしておいてやるよ」  含みのある笑いを飛ばしながら、ギルドは酒の瓶を傾けた。  先ほどまでと全然違うギルドの雰囲気に弘樹は驚く。  戦っているときは竜巻のように激しいのに、今のギルドはまるで微風のようだ。  本当に風のような男なんだな、と弘樹は内心呟いた。  ワイルドな食事が終わって、弘樹とキヌアは、特別にギルドの部屋……船長室に入ることを許された。 「まあ、散らかってるが、気にするな」  中に入ると本当に散らかっていた。  円卓の上には海図が散乱し、ベッドの周りには本が散乱し、本棚に並んでいる本たちも全部バラバラ。  ただ、窓際に置かれているボトルシップだけは綺麗に整列していた。
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