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船員によってたたき起こされたのは、翌日の早朝。
眠たい目を擦りながら起き上がると、急に体が傾き、弘樹は派手にハンモックから転がり落ちた。
思い切り顔を打ち付けてしまい、額を押さえながら立ち上がる。
――いったぁ! しまった……ハンモックで寝てるのを忘れてた。
まあ、誰もが通る道だよね!
うん、間違いない。
と、無理やり自分に言い聞かせながらキヌアを見ると、また口から涎を垂らして眠っている。
弘樹は鼻で笑いながら静かに体を揺すった。
「おい、起きろ。朝だぞ。あと一時間だなんて言うなよ?」
「うぅん……なら二時間……ZZZ」
「この小娘はぁ! ちょうどいい。ハンモックということで、お前にも同じ目にあってもらうぞ!」
弘樹はハンモックの端を掴むと、一気に持ち上げてキヌアを振り落とした。
「ひゃう!」
思い切り床に顔面から落ちたキヌア。
流石にやりすぎたかと思って顔を覗きこむと、キヌアの小さな鼻から鼻血が垂れている。
「い、痛いです……」
キヌアは目の端に涙を浮かべて鼻を押さえている。
すぐに医療箱からガーゼを取り出して小さく丸め、キヌアの顎を手で押さえて鼻の穴に突っ込んだ。
「むぎゅ!?」
「これで何とかなるだろう。三十分くらいで止まるかな」
「ひょう思ひまふ。ありはほうごはいまふ」
鼻が詰まってしまって言葉が変になり、弘樹は眉をしかめる。
「何を言ってるのか分からん。それより、甲板に出よう。そろそろ着くらしいぞ?」
「わはりまひた」
部屋から出て階段を上っていくと、太陽の光で目が眩み、頬に涼しい風が触れる。
光に目が慣れて周りを見渡すと、船員たちが元気に仕事をしており、海賊旗のマントを靡かせながらギルドが正面の島影を見つめていた。
「おはよう、ギルド」
「よう! いい朝だぜ。ところで、何で嬢さんは鼻に詰め物してんだ?」
「ハンモッフはら、おひまひた」
キヌアの言葉が分かったのか、ギルドが手を叩いて爆笑する。
「だっはっは! そいつはいい! まあ、分かるがな。ほれ、あれがアドラスだ」
ギルドが顎で指した先には、白い浜がよく見える島があった。
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