第11章 潮風に吹かれて

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 それほど大きくは無いようだが、ちゃんとした町も見えるし、丘の上には赤い屋根の屋敷もある。 おそらく、あの屋敷に島の領主がいるのだろう。  いい人であればいいのだが、まあ、シクルスが知っているのなら悪い人間ではあるまい。  そう思っていると、まだ島に到着していないのにギルドは錨を下ろすように指示した。 「港に入ってくれないのか?」 「残念だがな。アドラスは特に海賊に厳しい。旗でも見つかった日には、オレたちは全員縛り首よ。 島には小船で連れてってやる。オレたちは島の影に隠れてるからよ、用が済んだら来い。連れて帰ってやろう」 「ありがとう」  船からボートに乗り込み、白い浜辺に向かって進んでいく。  浜に辿り着くと弘樹とキヌアは荷物を持ってボートを降り、船員に手を振りながらアドラスの町へ向かった。  カールポートほど賑わってはいないが、それでも町は活気がある。  基本的に建物の構造はカールポートと変わらない。白い道路や白い家も。  ただ違うのは、このアドラスには多くの樹が生えていること。  その樹には沢山の実が成っており、取ろうと思えば簡単に取れそうだ。  どうも自慢の品は沢山の果物を使ったミックスジュースらしい。  しかもかなり種類があるようで、キヌアは看板に載っている 『強烈! レモンとライムのミックスジュース』 とやらに心を惹かれた様だ。 「……飲みたいのか?」 「はい!」  キヌアは顔を輝かせながら答えた。 「よし。じゃあ、俺も何か飲んでみようかな。せっかくだし」  弘樹は受付で暇そうに欠伸をしている店員の女の子に、ジュースを二つ注文した。  ちなみに弘樹が注文したのは、 『ポルクとバナナのミックスジュース』。  ――俺も随分とポルクが好きになったもんだなぁ。まあ、美味しいからいいよね。  店の前に並べられた白いイスに座ってジュースを飲んでいると、入港した船を検査官が調査している様子が目に入った。  なるほどギルドの言ったとおり、荷物や船室を一つ一つチェックしている。  島の方針がアレなら、領主もさぞ生真面目で堅苦しいのだろうと、弘樹はまだ少し不安になった。
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