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それほど大きくは無いようだが、ちゃんとした町も見えるし、丘の上には赤い屋根の屋敷もある。
おそらく、あの屋敷に島の領主がいるのだろう。
いい人であればいいのだが、まあ、シクルスが知っているのなら悪い人間ではあるまい。
そう思っていると、まだ島に到着していないのにギルドは錨を下ろすように指示した。
「港に入ってくれないのか?」
「残念だがな。アドラスは特に海賊に厳しい。旗でも見つかった日には、オレたちは全員縛り首よ。
島には小船で連れてってやる。オレたちは島の影に隠れてるからよ、用が済んだら来い。連れて帰ってやろう」
「ありがとう」
船からボートに乗り込み、白い浜辺に向かって進んでいく。
浜に辿り着くと弘樹とキヌアは荷物を持ってボートを降り、船員に手を振りながらアドラスの町へ向かった。
カールポートほど賑わってはいないが、それでも町は活気がある。
基本的に建物の構造はカールポートと変わらない。白い道路や白い家も。
ただ違うのは、このアドラスには多くの樹が生えていること。
その樹には沢山の実が成っており、取ろうと思えば簡単に取れそうだ。
どうも自慢の品は沢山の果物を使ったミックスジュースらしい。
しかもかなり種類があるようで、キヌアは看板に載っている
『強烈! レモンとライムのミックスジュース』
とやらに心を惹かれた様だ。
「……飲みたいのか?」
「はい!」
キヌアは顔を輝かせながら答えた。
「よし。じゃあ、俺も何か飲んでみようかな。せっかくだし」
弘樹は受付で暇そうに欠伸をしている店員の女の子に、ジュースを二つ注文した。
ちなみに弘樹が注文したのは、
『ポルクとバナナのミックスジュース』。
――俺も随分とポルクが好きになったもんだなぁ。まあ、美味しいからいいよね。
店の前に並べられた白いイスに座ってジュースを飲んでいると、入港した船を検査官が調査している様子が目に入った。
なるほどギルドの言ったとおり、荷物や船室を一つ一つチェックしている。
島の方針がアレなら、領主もさぞ生真面目で堅苦しいのだろうと、弘樹はまだ少し不安になった。
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