第11章 潮風に吹かれて

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 漁といえば、キヌアの出番だろう。 さて、彼女は今……浜にいた。  波打ち際に体育座りをしたままジッとこちらを眺めている。 「どうしたんだよ? 早く来いって!」 「――!」  何か言っているようだが、ここからでは聞き取れない。  すぐに浜に戻ってみると、キヌアは小さく言った。 「わたし……泳げないんです」 「は? だって、昔は泳いでたんだろ?」 「……トタクに殴られて、冷たくて苦しい海を流れて、おじいさんに助けられてから海が怖くなったんです。そりゃ、近づくことは出来ますよ? でも、泳ぐのは……」 「トラウマ……か」 「はい。ごめんなさい。せっかく、誘って貰ったんですけど…………わたし、そこの茂みで果物でも探しますね。  ヒロキさんとシーナさんは、泳いでいてください。では!」  キヌアは走って木々が茂る林の中に消えていった。  ――あいつ……たく、あんな風に言われたら海に戻れないじゃないか。 「シーナ、悪いけど……」 「うん。食材は私が探すから、あの子の傍にいてあげて。私も、そのほうがいいと思う」 「ありがとう」  弘樹はキヌアを追って林の中に入った。  そこまで深い林ではないので十分明るく、奥で樹に実った果物を取ろうと手を伸ばしているキヌアが見えた。  明らかに背が届かないのに、必死になって背伸びをしている。  それがどうにも、可愛く思えた。 「う~ん! と、届きません……」  がっくりと肩を落とすキヌアの背後に静かに近づき、手を伸ばして果物を取った。 「ほれ」 「ふぇ? ヒ、ヒロキさん? どうしてここに……」 「泳ぐのに疲れたから、少し休憩。それより、ここって結構木の実が多いな。一緒に採るか?」 「は……はい!」  キヌアは顔を輝かせて頷き、二人は協力して次々に木の実を採集していった。  夕刻になる頃には、二人の腕一杯に果物やキノコなどが抱えられていた。  一方のシーナも沢山の魚介類を手に入れており、屋敷に戻った三人は協力して夕食作りを始めた。  手から炎を出したときは大層驚かれたが、まあ、いつものことなので流しておく。  出来上がったのは魚介類のシチューと果物のサラダ。  
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