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空が闇に包まれ、屋敷の中に光が灯されて、アメハメハ氏も交えた和気藹々とした夕食が始まった。
だが……。
「領主様!!」
突然屋敷の扉が開かれて、血相を変えた町人が飛び込んできた。
「何事だ!?」
「島の外に海賊がいました! 現在、港で拘束しています!」
「なんだと!? 分かった。お客人、申し訳ないが食事を続けていてください。何も心配はありませんので。では……」
アメハメハは杖をつきながら屋敷から出て行った。
心配は無いと言われても、誰が捕まったのかは見当がつくので、弘樹たちは非常に不安になった。
二人の事情など知る由も無いシーナは呟く。
「最近、海賊が多いんだよね。まだこの町は襲われてないけど、いつ襲われるか……」
だが弘樹の耳には入っていない。
すぐにでも港に行って確かめたかったが、今行けば話しがかなりややこしくなってしまうので、弘樹は人々が寝静まるのを待つことにした。
決行するとしたら、午前二時というところか……。
寝室に案内され、ベッドに寝転んだ弘樹は、天井をジッと見つめて作戦を練った。
「ヒロキさん……捕まった海賊さんって」
「ああ。十中八九、ギルドだと思う。だけど解せないのは、なんで大人しく捕まったのかということだ。
ギルドの実力なら、むざむざ捕まることも無いだろうに……」
「とにかく助けてあげましょうよ。このままだと、きっとギルドさんたちは縛り首ですよ」
「分かってる。だから助ける方法を考えてるんだ。少し寝ておいたほうがいい。決行は深夜になるから、眠気があると失敗するかもしれない」
「分かりました。じゃあ、おやすみなさい。絶対に起こしてくださいね?」
キヌアがシーツに包まって寝息を立て始めてからも、弘樹は天井を見上げたまま考え続ける。
――問題は、見張りの数と船員の数だ。ギルド一人を助け出すならまだしも、乗組員たちはざっと三十人はいる。
しかも船を取り戻すとなると至難の業だ。
だけど、出来ることなら揉め事は起こしたくない。
う~ん……参ったなぁ。ギルドが船を諦めるとも思えないし、もしかしたら、もう縛り首になったのかも……。
いや、そんな後ろ向きなことは考えまい。
二時まであと一時間か……長くなりそうだ。
弘樹はその後も頭を悩ませた――。
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