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一方その頃、港に拘束された船の甲板にて、アメハメハと手足を縛られたギルドが睨み合っていた。
先ほどから一言も会話が交わされていない。
アメハメハは海賊の首領が十九の少年であることに驚き、ギルドは自分たちが見つかったことに驚いている。
だが、ギルドは弘樹が密告したなどとは微塵も思っていない。
また見つかり方も考えてみれば笑える話だ。
島でも一番人気が無い断崖絶壁の陰に隠れたのだが、なんとそこが子供たちの秘密基地で、見事に遊んでいる子供たちに海賊旗を見られてしまった。
心中で、我ながらおかしな話だ、とギルドは嘲笑う。
やろうと思えば体を縛る縄を千切るのは簡単だ。
しかし、ギルドはあまり気が進まない。
見つかってしまったのは指示を出した自分のミスであり、ここまできて抵抗するのも潔くは無い。
――へっ、オレには縛り首がお似合いだぜ。
一度冷たく笑ったギルドは、アメハメハに向かって口を開いた。
「おい、いつまで黙ってんだ? さっさと吊るすなり首斬るなり好きにしやがれ」
「言われなくとも、そうする。明日の正午にお前は絞首刑に処す。それまで、地下牢に入っていろ」
「はいはい。仰せのままに」
あまりにも素直なギルドにアメハメハは驚いた。
思わず口から質問が出る。
「お前は、死ぬのが怖くないのか?」
「阿呆。縛り首が怖くて海賊やってられるか。さあ、早く案内してくれ」
大胆不敵とは、正にこのことだろう。
アメハメハは呆気に取られながら、地下牢へ連れて行かれるギルドたちを眺めることしか出来なかった。
地下牢は港のすぐ近くの林の中にあり、地面に設けられた木製の扉を開けると、地下へ階段が続く。
そこを下りていくと、湿気と暗闇に包まれた牢屋が出てくる。
石の壁には苔が生え、息を吸うたびに凄まじい湿気が肺の中に入ってくる。
――おいおい……ここに三日もいたら、体の中にキノコが生えちまうんじゃねぇか?
まあ、三日もいねぇけどよ。
心中で文句を呟きながら、ギルドは大人しく牢屋の中に入った。
大勢の仲間たちも五人ずつに分けられて、左右の牢に入れられた。
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