第11章 潮風に吹かれて

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 時計を見ると、予定の二時まであと五分。  弘樹は結局一睡もしないまま案を練っており、そろそろ出かけたほうがいいと思い、キヌアの肩をそっと揺らした。 「おい、そろそろ行くぞ」 「うぅん……わ、わかりました」  流石に、あと二時間とは言わなかったことに少し安堵しながら、弘樹とキヌアは音を立てないように屋敷から出て港へ向かう。  辺りは静まり返っているが、港には煌々と明かりが灯されて、ギルドの船が照らし出されている。  見つからないように、他の船の陰に隠れながら海賊船に近づくと、やはり見張りの男たちが何人か甲板に立っている。  さて、ギルドたちは一体どこに捕まっているのだろう?  もしも船の中に拘束されていたら終わりだ。  あの人数の目を掻い潜って船に潜り込むことは出来ない。  この世界にダンボールは無いのだから。  弘樹が唾を飲みながら聞き耳を立てると、甲板に立っている男たちの会話が聞こえてきた。 「ふわぁ……まったく、人騒がせな海賊どもだ」 「ああ。しかし、驚いたな。あの『竜巻』の正体が子供だったとは。何があったら、あそこまでの悪さをするんだろうな?」 「俺に聞くな。で、地下牢の見張りは万全なのか?」 「それは心配ない。ほら、あそこにちゃんと二人とも立ってるだろう?」  男が指差したほうを見ると、微かではあるが茂みの中に樹の扉が見えた。  あそこが地下牢への入り口に違いない。  見張りも二人だし、静かに行けばバレることはないだろう。  二人は周囲に気を配りながら地下牢への入り口がある林に入った。  入り口のすぐ傍にランプを持った男が二人いて、どちらも手に鉈を持っている。  見つからずに入ることは非常に難しいが、剣を使いたくない。  ちょうどいいことに、二人のすぐ傍には太い木の棒が落ちている。  弘樹は静かにキヌアに囁いた。 「キヌア、そこの棒で右の男を頼む。俺が左をヤるから」 「そ、そんなこと出来ませんよぉ。わたし、これでも女の子なんですからぁ」  そう言っている割には、既にその手に棒を持っている。 「あぁ、分かったよ。じゃあ、女の子らしくガツンと頼む」 「や……やってみます」  二人一緒に三つ数え、素早く茂みから飛び出して男たちの後頭部を殴った。
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