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時計を見ると、予定の二時まであと五分。
弘樹は結局一睡もしないまま案を練っており、そろそろ出かけたほうがいいと思い、キヌアの肩をそっと揺らした。
「おい、そろそろ行くぞ」
「うぅん……わ、わかりました」
流石に、あと二時間とは言わなかったことに少し安堵しながら、弘樹とキヌアは音を立てないように屋敷から出て港へ向かう。
辺りは静まり返っているが、港には煌々と明かりが灯されて、ギルドの船が照らし出されている。
見つからないように、他の船の陰に隠れながら海賊船に近づくと、やはり見張りの男たちが何人か甲板に立っている。
さて、ギルドたちは一体どこに捕まっているのだろう?
もしも船の中に拘束されていたら終わりだ。
あの人数の目を掻い潜って船に潜り込むことは出来ない。
この世界にダンボールは無いのだから。
弘樹が唾を飲みながら聞き耳を立てると、甲板に立っている男たちの会話が聞こえてきた。
「ふわぁ……まったく、人騒がせな海賊どもだ」
「ああ。しかし、驚いたな。あの『竜巻』の正体が子供だったとは。何があったら、あそこまでの悪さをするんだろうな?」
「俺に聞くな。で、地下牢の見張りは万全なのか?」
「それは心配ない。ほら、あそこにちゃんと二人とも立ってるだろう?」
男が指差したほうを見ると、微かではあるが茂みの中に樹の扉が見えた。
あそこが地下牢への入り口に違いない。
見張りも二人だし、静かに行けばバレることはないだろう。
二人は周囲に気を配りながら地下牢への入り口がある林に入った。
入り口のすぐ傍にランプを持った男が二人いて、どちらも手に鉈を持っている。
見つからずに入ることは非常に難しいが、剣を使いたくない。
ちょうどいいことに、二人のすぐ傍には太い木の棒が落ちている。
弘樹は静かにキヌアに囁いた。
「キヌア、そこの棒で右の男を頼む。俺が左をヤるから」
「そ、そんなこと出来ませんよぉ。わたし、これでも女の子なんですからぁ」
そう言っている割には、既にその手に棒を持っている。
「あぁ、分かったよ。じゃあ、女の子らしくガツンと頼む」
「や……やってみます」
二人一緒に三つ数え、素早く茂みから飛び出して男たちの後頭部を殴った。
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