第11章 潮風に吹かれて

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 弘樹は加減が分かっているが、キヌアは分からないので本当に本気で殴ってしまい、男は鼻から血を吹き出して倒れてしまった。 「これ……生きてるのか?」 「大丈夫です。心臓は動いてます」 「そういう問題じゃ……まあ、いいか」  兎にも角にも入り口は開かれ、弘樹たちは階段を下って地下牢へと入った。  聞こえてくるのは人の息と水が滴る音だけ。  かなり暗いので、弘樹が腕から炎を出すと、牢の中に閉じ込められた船員たちとギルドが見えた。 「おお! お客人! 頼む、ここから出してくれ!」 「分かってる。それより、ギルドは……」  ギルドは不敵にも鼾をかいて眠っている。  ――こいつ……なんか、心配して損した気がする……。  弘樹は鉄格子を掴んでギルドを呼んだ。 「おい! ギルド! 起きろ!!」  しかしギルドは起きない。  隣の船員が、苦笑いしながら弘樹に言う。 「兄貴は、ちょっとやそっとじゃ起きないんだ。かといって無理に起こせば殴られる」 「そんな理不尽な……よぉし、そっちがその気なら、こっちにも考えがある」  弘樹は小さな炎が燃える指先をギルドに向ける。 「ヒロキさん……まさか」 「そのまさかだ!」  にやりと笑った弘樹の指先から大きな炎が噴出し、眠っているギルドの前髪に燃え移る。 「っ!? だぁっちぃ!!」  驚いたギルドは牢の中を転げ回り、縮れた髪を摘みながら起き上がった。 「くぅ……オレの髪が……ヒロキィ、もっと起こし方があると思うぜ?」  意外にもギルドは、弘樹が来たことに驚いていない。  まるで最初から分かっていたような態度に、逆に弘樹が鼻を摘まれたような気がした。 「もしかして、予想済みだったとか?」 「ああ。まあ、確信があったわけじゃねぇ。なんとなく、そんな気がしただけだ」 「来なかったらどうするつもりだったんだ?」 「そんときゃ、潔く首吊るつもりだったぜ? とっとと引っ張り出せ」 「はぁ……面倒くさい奴だなぁ。待ってろ。今開けてやる」  周りを探してみたが鍵が見当たらないので、仕方なくイスカリオンを取り出して鉄格子を切断した。  まるで手ごたえが無い。  改めてイスカリオンの切れ味に息を呑みながら、ギルドの手足を縛っていた縄を解き、さらに他の船員たちの縄も解いた。
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