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幸いにもすぐに見つかったので、彼女の上着を掴んで海面に出た。
ギルドの船は既に遠くに離れている。
「ギルド!!」
弘樹が叫ぶと、ギルドは甲板から身を乗り出して大きく手を振っていた。
腹が立つが、とにかく弘樹は気を失っているキヌアを気遣いながら港に戻った。
「おお、使者様! ご無事ですか?」
「は、はい。それよりもキヌアを頼みます。こいつ、カナヅチだから」
桟橋に上がり、シーナに大きなタオルを巻かれたキヌアは医者のもとへ運ばれ、弘樹はアメハメハの屋敷へ戻った。
温かい茶を飲みながら、アメハメハの言葉を聞き流す。
恩を仇で返されたと腹が立つ一方で、もしかしたらこれで良かったのかもしれないという安堵が胸の中で渦巻いていた。
兎にも角にも、ギルドは無事に逃げられ、自分はちゃんと礼を言って島を離れられるなら良いか、と弘樹は内心納得した。
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