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翌日、弘樹とキヌアは風邪も引くことなくアドラスを後にした。
地元の漁師の漁船に乗り、カールポートへ向けてひた走る。
当たり前だが、もう洋上にギルドの船は見えない。
行きは哨戒を潜って進んでいたので時間がかかったが、この船足なら半日もあればカールポートに辿り着くだろう。
弘樹もキヌアも甲板に座ったまま口を開かない。
――ギルドの奴……俺たちのことをどう思ってたんだ?
少なくとも俺は、いい友人になれたのだと思ってた。
でも、もしかしたらあいつは、そこまでの思い入れは無かったのかもしれない。
だけど、それなら、なんで俺たちが助けにくると思ったんだろう?
不思議な奴だ……もう一度会えたなら、理由を聞いてみたいな。
そう思っていると、中年の漁師が昼食である魚のサンドイッチを差し出してきた。
一口頬張ってみると中々いける。
「……美味しいですね」
「ああ……」
気を紛らわすために、二人は他愛の無い会話を続けた。
漁船は正午を過ぎた辺りでカールポートに辿り着いた。
厚く礼を言って、二人は上陸する。
港祭りが終わったカールポートはかなり落ち着いていて、人通りもあまりない。
本来ならばこのままカルリースへ帰還するところなのだが、二人の足取りは自然と第八停留所に向かっていた。
扉を少しだけ開けて中の様子を見ると、先日と同じように船員たちが休んでいる。
入るべきか入らざるべきか……悩んでいると、二人の肩を背後から誰かが叩いた。
「よっ! また会ったな」
「ギルド!」
振り向いてみると、そこにはギルドが愉快げに笑っている。
だが弘樹はすぐに眉を寄せて食って掛かった。
「ギルド……話がある」
「分かってる。まあ、とりあえず船に入ってくれ。ここじゃ流石に色々とマズイ」
船室に入った弘樹は早速切り出した。
「ギルド、お前一体どういうつもりだ? せっかく助けてやったのに、海に落とすなんて」
「まてまて、それでオレが責められるのはお門違いってやつだぜ?
オレはお前らが真っ当に島から出られるように手助けしてやったんだ。
感謝されたいもんだぜ。
だが……たしかにオレにも落ち目はある。まあ、成り行きだったんだが、お前らを危ない目に合わせちまったことには変わらん。柄じゃねぇが、反省してるぜ」
ギルドは顔を逸らして前髪を指で弄り始めた。
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