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「兄貴、荷物を忘れていく奴がありますか……」
「まったく、肝心なときに抜けるのが船長の悪いところだ」
「だが俺たちは、そんなアンタに惚れたんだ」
「頑張ってくださいよ! オレたちは、ずっとここで待ってますからね!」
「ブレストの奴らを蹴散らしちまえ!」
「兄貴が戻ってくるまで、オレたちは本物の漁師でもやりますよ」
「大出世してくだせぇ!」
他にも様々な声援がギルドに送られた。
周囲に停泊している船の船員たちは、一体何事かとマストに登ってこちらを眺めており、そんなことは全く眼中に無い海賊たちは、ギルドに向かって大きく手を振って見送っていた。
途端にギルドの頬が紅く染まり、旋風を巻き起こして手にウィンディルグを握り、地面を強く打つと、地響きが起きて騒いでいた仲間たちが静まり返り、ギルドは大声で怒鳴った。
「馬鹿野郎! このオレに恥をかかせるんじゃねぇ!!
オレが戻ってくるまで、海軍なんぞに旗取られるんじゃねぇぞ! 分かったか!?」
「へい!」
仲間たちの返事を聞く前に、ギルドは停留所から出て行った。
停留所の外でギルドは暫く立ち尽くしており、ギルドの顔を覗き込もうとしたキヌアの肩を掴んで止める。
「……いい仲間たちだな」
「へっ、馬鹿なだけだ。あの野郎共……人の恥なんぞ考えもしねぇ。はぁ」
「……泣いてるんですか?」
「野暮なことを聞くんじゃねぇ。ほら、とっとと行くぞ」
荷物が入った袋を肩に担ぎ、海賊旗のマントを翻しながらギルドは港を出た。
弘樹たちも彼を追いかけ、カールポートを出て広大な草原に出ると、三人を涼しい潮風が包み込んだ。
まるで、ギルドの旅立ちを海が祝福してるようだった。
こうして海賊ギルドは弘樹たちの仲間に加わった。
三人は王都カルリースへ帰還するために、巨大なクロスロックに向けて歩を進めていく。
青き海から送られる、優しい潮風に吹かれながら……。
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