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キヌアが帝国の姫君であるルミナ・イールドであることを知ったギルドは、最初は口笛を吹いたが、すぐに笑顔に戻って、事実を教えてもらったことに礼を言った。
「ありがとよ。これで胸のモヤモヤが一つ晴れた。しかし、随分とややこしい話になってきたな。
摂政に乗っ取られた帝国の姫君が、こうして賊と旅をしているとはよぉ」
「わたしもビックリしてます……異世界から来たヒロキさんがいるだけでも、まるで夢みたいなんですから」
「まあ、迎えにきたのはお前だけどね。俺からしても、今の生活なんて夢みたいだよ」
「ヘッ、どいつもこいつも事情があるようだな。だが楽しくやっていこうじゃねぇか。とにかく、ブレストとの戦がさっさと終わっちまえば、それで万事安泰じゃねぇか」
ギルドは気楽に言っているが、弘樹にはまだ先がある。
そう……黒き王を倒すという使命が。
流石にブレストとの戦が終わればギルドも離れていくだろう。
古より伝えられる魔王との戦いに首を突っ込むほど、酔狂な男ではない。
弘樹は聞こえないように溜息を吐いて、寝袋に包まった……。
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