第13章 帰還

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 それから二日後に大山脈を抜けることに成功した。  山を下り、目の前に広大な草原が広がるのを見て、三人は大きく溜息をつく。  今回は谷に落ちて流されるということは無かった。  だが、もう足が疲れきっていて、ここからさらにティガルの森まで行かなければならない。  それに、例によって食料もかなり底が見えてきた。  とにかくギルドがよく食べる。  少なくとも、一人で二人分は食べてきたのだから、食糧難になるのも当たり前だ。  早く森に行ってキノコなどを調達しないと、そのうち飢えて動けなくなるかもしれない。  焦る気持ちを抑えながら、キヌアの体調のことも考慮に入れて、弘樹たちは一旦休憩をとることにした。  背後を振り返り、頂上が霞む大山脈を眺め、よくもこの険しい山々を越えたものだと内心で自分に感心する。  他愛のない会話が続いた。  話せば話すほど、互いの知らない部分が分かってくる。 「ギルドさんは、左目が見えなくて不便じゃないんですか?」 「もう慣れちまったよ。だが、このオレの唯一の死角だ。だから、お前らなるべく左側に回るんじゃねぇぞ? つい癖で警戒しちまう」 「分かった。ところで、一つ聞いておきたいんだけど」 「いいぜ? なんだ?」 「ギルド……人を殺すって、どういう感じなんだ? どんな気分になる?」  周囲に重苦しい雰囲気が漂い、ギルドが反問する。 「なんでそんなことを聞く?」 「ブレストとの戦が始まれば、俺も戦場に出ることになる。なら、きっと人を殺すときが来ると思うんだ」 「なるほどな。まあ、簡単に言っちまえば、あっけないもんだ。人ってのは、案外簡単に死ぬ。槍の穂先で腹を貫いちまえばそれで終わりだ。  生憎と、オレの初殺人は親の仇だったんでね。何の感覚も感傷も無かったぜ? あとは慣れだ。  そもそもオレは、常に死と隣り合わせだった。だから、人のことを考える余裕なんぞ無かったのさ。  まあ、このご時勢だ。人を斬ったところで、誰もお前を責めはしない。思いっきり暴れちまえ」  ギルドは気楽に言っているが、弘樹は肩を落として自分の手を見つめる。
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